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たてもの文様 切り紙ワークショップ『行灯を作ろう』

活動報告ブログ

2025年度東京都庭園美術館インターンシップ生による記事です。


暮らしの中には、植物や動物などを連想させる様々な「文様」が潜んでいます。日常で何気なく目にしているコンクリートブロック、着物、家紋などに含まれる文様の「かたち」には、人々の思いや願いが継承されているといわれています。

2025年の夏、「文様」に焦点を当てたワークショップ「たてもの文様 切り紙ワークショップ『行灯を作ろう』」を実施しました。年に一度の建物公開展「建物公開2025 時を紡ぐ館」のサテライト展示「交わる建築 旧公衆衛生院×旧朝香宮邸」の関連プログラムとして開催しました。本ブログでは、その時の様子をご紹介します。

行灯ワークショップの様子
ワークショップの会場風景

みなさんは「建物公開展」をご存じでしょうか。建物公開展とは、国の重要文化財に指定されている旧朝香宮邸(現・東京都庭園美術館本館)の建築的な魅力について、毎年異なるテーマから紹介する展覧会です。約6年ぶりに夏季の開催となった今年度のテーマは、「機能の変遷」です。朝香宮家の邸宅として1933年に竣工してから家族が過ごした14年間、戦後の皇室離脱に伴って外相・首相公邸として利用された7年間、白金迎賓館として賓客を迎えた19年間、民営の催事・結婚式場等に活用された7年間、そして美術館として開館してからの42年。「建物公開2025 時を紡ぐ館」展では、このような各時代に焦点を当てた作品・写真・映像などを通じて、建物の記憶をたどりました。

建物公開2025 時を紡ぐ館のポスター
展覧会ポスター
本館 大食堂の会場風景
展覧会の会場風景

本展の開催に伴い、当館に近接する港区立郷土歴史館(旧公衆衛生院)において、サテライト展示「交わる建築 旧公衆衛生院×旧朝香宮邸」が行われました。1938年に内田祥三(1885-1972)によって設計された旧公衆衛生院は、国の研究・教育機関として建てられましたが、現在は港区立郷土歴史館として地域の文化拠点という役割を担っています。サテライト展示では、両館の建築意匠・素材・技法などが多角的に比較されていました。

サテライト展示会場の入り口にある看板
港区立郷土歴史館(旧公衆衛生院)4階ギャラリー入口
サテライト展示の会場風景
サテライト展示の会場風景
旧公衆衛生院と旧朝香宮邸の建物が比較されたパネル
解説パネル

このサテライト展示に関連して行われた、「たてもの文様 切り紙ワークショップ『行灯を作ろう』」では、旧朝香宮邸および旧公衆衛生院に潜む装飾や文様を切り紙にし、夏の夜を彩る行灯に仕立てました。もんきり研究家の下中菜穂さんをワークショップの講師にお招きし、歴史的建造物や切り紙に関心を持つ31名の方々にご参加いただきました。

ワークショップ講師の下中菜穂さんがレクチャーする様子
講師の下中菜穂さん

はじめに、切り紙の型紙となる文様を選びます。旧朝香宮邸のアール・デコ様式を象徴する幾何学的な形状が反復するデザインや、旧公衆衛生院の特徴的な外観や照明器具のデザインなどが印刷された用紙が準備されており、これらを自由に組み合わせて好きな色の画用紙の上にセットします。

東京都庭園美術館の本館1階次室床の幾何学模様のタイル
旧朝香宮邸の装飾
旧公衆衛生院の外観にみられる装飾
旧公衆衛生院の装飾
旧公衆衛生院に設置されている照明器具
旧公衆衛生院に設置されている照明器具

次に、型紙に印刷された文様の輪郭をカッターナイフやハサミで切りとり、自分だけのデザインを作り上げます。

行灯の制作に用いた材料が机に並べられている様子
型紙などの材料
型紙を画用紙に固定する様子
制作風景
建物に見られる様々な文様のデザインを組み合わせて紋切りした画用紙
建物に見られる様々な文様のデザインを組み合わせて紋切りした画用紙

最後に、文様を切り取った画用紙を三角柱の形状をした白い紙の中にセットし、持ち手と電球を付け加えます。

紋切りした画用紙を三角柱の白い紙の中にセットする様子
完成した行灯
完成した行灯

そして、完成した行灯を集めて暗闇の中で点灯させ、それぞれのこだわりを共有し合いました。型紙のデザインが予め設定されていたにもかかわらず、文様や色の組み合わせによって個性が表れている点が魅力的でした。

暗闇で行灯を点灯させた様子
暗闇で輝く行灯

ここで制作された行灯は一時的に預かり、2025年8月23日に港区立郷土歴史館(旧公衆衛生院)で開催された「夏の行灯ナイト2025」において展示されました。

旧公衆衛生院で行われた「夏の行灯ナイト2025」の展示風景
「夏の行灯ナイト2025」の展示風景

今回のワークショップでは、旧朝香宮邸や旧公衆衛生院の「たてもの文様」について学び、今まで見落としていた文様に出会うことができました。また、これまでとは異なる視点で建物を楽しむ機会となり、建物公開展での鑑賞がより充実した時間となりました。

参考文献

執筆:東京都庭園美術館インターン 石原史奈