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やさしい日本語で美術館を楽しむプログラム 「驚く服を見つけよう!あなたは何を着たいですか?」

活動報告ブログ

「奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム」展を舞台に、「やさしい日本語」を使った鑑賞プログラムを行いました。今回も6月に続き港区国際交流協会にご協力いただき、「みなとにほんご友だちの会」のメンバーを対象に行いました。午前・午後で2回実施し、日本、マレーシア、イタリア、中国、台湾の計20名のみなさんにご参加いただきました。前回はオンラインでしたが、今回は美術館に集まります。
(2021年6月のオンラインプログラムの記録はこちら

「驚く服を見つけよう!あなたは何を着たいですか?」

20世紀最大の芸術運動であるシュルレアリスムは、様々な分野に影響をもたらしました。展覧会では、「奇想」をキーワードに、シュルレアリスムの潮流から、その感性を受け継いだ絵画、彫刻、ファッション、現代美術など様々な表現の作品が紹介されています。

1.どんな服が着たいですか?
展覧会を形作る「奇想」という言葉を「変わった考えのこと」「思いつかないアイディア」と言い換えました。展示室には、不思議なデザインの帽子、生物を素材に作られた服や靴、どれも日常的な装いとはかけ離れたものが多く並びます。「驚く」ものばかり。しかし「着る」という行為は誰にとっても日常的なもので、場所や時間、会う人によって選ぶこともあります。

今回のプログラムでは、「着る」を共通のテーマにしました。
まずは自己紹介を兼ねて、特別な日に着たい服についてみなさんに教えてもらいました。
「みなさんは 特別な日に 何を着ますか? お祭り お祝い 大切な人と会うとき…あなたの好きな服や靴を教えてください。」
伝統的なお祭りのための衣裳、野球観戦の際に着る法被、家族に貰った髪飾り、長く大切にしている服など、ファッションに関する様々なものがエピソードととも紹介され、お互いに興味深く聞き入っているようでした。
事前にこの質問を伝えていたため、愛用の着物で参加してくれた方もいます。

2.展覧会をみる
展示室に出かける前に、作品を見るための練習をします。
実際に展示されている作品の画像を見ながら、気づいたことなど話し合います。
「これは本当に靴?どうやって履きますか?」
「大きな目が写るこのワンピースは街中ですごく目立つ。周りの人は、逆に自分が見られているような感じがしそう。」
様々な意見が出ました。

今日は各自で展覧会を鑑賞し、スタジオに戻ってから皆で一緒に話をします。
3つの質問をもとに、気になる作品を探しに行きます。
①どの作品を着たいですか?
②どの作品が欲しいですか?
③展覧会を見て気づいたことは何ですか?

3.みんなで話す
展覧会を見終わったらスタジオに再集合。
多くの作品があり、全ての会場を回り切れなかった方もいたようですが、気になる作品には出会えたようです。
グループに分かれて、それぞれが見てきた作品について、作品カードを見せながら共有します。

「この作品が気になりました。あまりに個性の強い帽子。どんな場面で被っていたのだろう?」
「虫の羽を使った作品など、気持ち悪いと感じてしまうものもありました。着なくても見るだけで十分!」
「これは絶対に着られない(体に合わない)けれど、着心地を体験してみたいです。」
「日本と西洋のものを比較してみると日本の装飾品は控え目、小さい感じ。」
「馬のズボンをはいてみたいです。イタリアで似たようなものを見たことがあります。」

会場には、纏足靴や西洋のコルセットも展示されていました。
いろいろな国のルーツの参加者が集まっていたため、それぞれの文化圏の状況や歴史に詳しい人が、皆に教えてくれる場面もありました。
各グループとも話が弾み、あっという間に時間が過ぎていきます。

最後にグループごとに話された内容を全体で共有し、プログラムは終了です。
アンケートから、参加者の感想をいくつか紹介します。
・たくさんの方々と交流できました
・アートの見学が終わってから、みなさんが話しあう時間がとてもたのしかったです。
・きれいな靴と服をみました。日本の文化がわかりました。
・An interesting exhibition. very engaging & eye opening, which leads to very good discussions.

特に、鑑賞後のグループでのディスカッションが楽しかったと答えた方が多かったようです。展覧会を一人で楽しむこともできますが、話し合うことで別の人の視点から気づかされることもあります。作品の中には世界各地の文化や歴史に関するものも多く、参加者同士の体験や知識も共有されることで、グループごとの時間がさらに豊かになっていたように感じます。

すべての言葉を簡単にすることはできませんが、表面的な言葉以上に、相手が伝えようとしている中身をわかろうとすることが大切だと改めて実感しました。「やさしい日本語」をきっかけに、コミュニケーションの基本的な姿勢にいても考えさせられます。

概要

やさしい日本語で美術館を楽しむプログラム「驚く服を見つけよう!あなたは何を着たいですか?」
日時2022年3月5日(土) ①10:30~12:30 ②14:00~16:00
場所東京都庭園美術館 スタジオ及び展示室
対象「みなとにほんご友だちの会」(運営:一般財団法人港区国際交流協会 主催:港区)の参加者
参加人数①8人  ②12人
協力港区、一般財団法人 港区国際交流協会
執筆大谷郁(東京都庭園美術館 教育普及担当)