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やさしい日本語で美術館を楽しむプログラム 「生活の中の文様を見つけよう」を開催しました!

活動報告ブログ

多文化理解、多文化共生という言葉を耳にする機会が増えてきています。国籍や文化背景に関わらず、誰もがその人らしく、安心して暮らすことのできる社会を目指し、地域の自治体や団体によってさまざまな取り組みが進められています。コロナウイルスによる影響で旅行者や在住者の数は一時的に減ったものの、当館がある港区にも沢山の外国人がおり、約130の国籍の人々が暮らしています。

2021年6月27日、港区国際交流協会(以下、MIA)の協力のもと「やさしい日本語で美術館を楽しむプログラム」をオンラインで開催しました。港区とMIAが運営する「みなとにほんご友だちの会」(以下、みなとも)では、日本人と外国人含め約200人の市民が参画し、様々な交流活動が行われており、今回はこの「みなとも」のメンバーから参加者を募りました。MIAを通じて参加を呼びかけたところ、日本以外にはメキシコ、タイ、韓国、中国、台湾、ポーランド、ジャマイカ、シンガポール、ウルグアイ、イギリス、と様々な国籍の方に応募いただき、ここに港区の特徴が表れているようでした。
当日集まったのは17名のみなさん。プログラムでは「やさしい日本語」を使います。「やさしい日本語」とは、外国人にもわかりやすい表現や言葉に言い換えた日本語のことです。在住外国人の国籍の多様化に伴う言語対応として、公共サービスをはじめ、様々な場所で取り入れられています。

「生活の中の文様を見つけよう」
今回のプログラムのテーマは「文様」です。生活の中にある様々な「文様」をきっかけに、当館の建物のデザインに施された文様を使った創作活動を行います。地域の美術館としてまずは当館のことを知ってもらうことに加え、参加者同士が交流する時間も組み入れました。

1.「文様」って?

まずは自己紹介。お互いのことを知るために、事前にちょっとした宿題を出していました。
「みなさんの家にある文様を見せてください。」
文様は私たちの生活に身近なものです。世界には様々な文様があり、衣服や建築、インテリアなど、日々いろいろな場所で目にしています。
3つのグループに分かれて、それぞれが持ち寄ったものを見せ合いながら自己紹介を行いました。中には伝統的な柄の布などもあり、これは「どんなものなの?」と話が広がります。
文様のイメージを掴んだ後は、当館の歴史や建築の特徴についてお話しします。美術や建築、歴史の話題となると、簡単に言い換えることが難しい用語も多くあります。そんな時には英語を併記したり、写真を指し示すなどし、さらにゆっくり話すことを心掛けました。

当館の建物の文様の紹介は動画で行いました。

https://www.youtube.com/embed/m9Ch10PJ69w

各参加者のもとには事前に制作用の道具が送付されています。セットの中は当館の文様のステンシルプレート(文様をくりぬいた型)も同封。動画を見ながら、自分の手元に届いた文様が館内のどこにあるのかを探します。

2.「文様」で布をデザイン

美術館の建物の中の文様を見た後、それらの文様を使って布にステンシルで着色し、オリジナルの布をデザインします。

まずは制作の実演。布にステンシルを置いて、スポンジでポンポンと色をつけます。
作り方がわかったら、画面越しに一緒に制作を行います。黙々と作業をしながらも、途中で質問をしたり、進捗を共有することができます。

2.共有とふりかえり

水の加減が難しい!といった事態も起こりましたが、コツを伝授し助け合いながら、なんとか完成。
出来上がった布を一斉に見せ合いました。

再びブレイクアウトルームに分かれ、完成した布を見せつつ、話題をまた少し「生活」に引き寄せます。

「作った布はどこで使いますか?」
頭に巻いて身に着けたり、巾着にしたり、好きな形に切ってコースターするなどのアイディアがでました。

参加したみなさんからのコメントをいくつかご紹介します。
・庭園美術館の歴史、建物の新たな魅力を知る事ができた
・文様にも文化の蓄積があって、いろいろな文様のことがわかりました
・オンラインだったが、自分自身の作品を作るのに手を動かしたり、考えたりしたことで、参加する実感があった
・参加した皆さんが作った個性的な作品を見ることができた
・The best is seeing everyone’s work and hearing how they will use the pattern in everyday life.
・I have learnt a lot of interesting facts and details about the Museum and gained a new skill -how to paint the Japanese patterns on the clothes!

遠隔だったにも関わらず、グループごとの対話の場面では話が尽きない様子でした。今回は韓国から参加した方もおり、制作道具はお届けできませんでしたが、文様を使った別のワークを準備し、一緒に参加してもらいました。今すぐ美術館に行くことは難しくても、少しでも当館を身近に感じてもらい、実際に足を運んでみたいと思っていただけたら嬉しいです。

当館では初めての「やさしい日本語」を使ったプログラム。当初は2021年の3月に実施する予定でしたが、コロナ禍での臨時休館等が重なり、2度の延期を経てオンラインにて実現しました。準備から運営までご協力いただいた港区国際交流協会の皆さん、どうもありがとうございました!
「やさしい」には簡単というだけでなく、相手に「やさしく」配慮するという意味も含まれます。言葉や文化背景、また世代や状況の違う方々が、美術館で一緒に豊かな時間を過ごせるような機会を積極的に作っていきたいと考えています。

次は美術館でお会いできますように。

概要

やさしい日本語で美術館をたのしむプログラム「生活の中の文様を見つけよう」

日時2021年6月27日(日)14時〜16時30分

場所オンライン

対象「みなとにほんご友だちの会」(運営:一般財団法人 港区国際交流協会 主催:港区)の参加者

参加人数17名

主催東京都庭園美術館

協力港区、一般財団法人 港区国際交流協会

協賛ターナー色彩株式会社

執筆大谷郁(東京都庭園美術館 教育普及担当)