ガラス作品とデザイン画、100年ぶりの邂逅
本展では、ガレの遺族の手を経て現在パリのオルセー美術館が所蔵する、ガレのデザイン画が展示されます。水彩のデザイン画は、展示することが許される期間が短いため、オルセー美術館でも滅多に公開されません。
また、デザイン画があっても、それが実作と一致することはきわめて稀なことですが、今回は北澤美術館が行った調査により、実作と一致するデザイン画をご紹介します。コレクターの手を経て今は日本にあるガラス作品と、オルセー美術館に眠るデザイン画の、100年ぶりの邂逅です。
邸宅美術館でガレを見る
当館の本館展示室は、1933年(昭和8年)に建てられた住宅建築をそのまま展示室として使用しています。壁画やマントルピースや鏡、柱や照明器具などがそれぞれ表情を作り出す部屋と、展示作品との響きあいを鑑賞するというのが当館オススメの楽しみ方です。
「ガレの庭」展では、この邸宅美術館の空間を、ガレが愛してやまなかったラ・ガレンヌの自邸と庭に見立てて楽しんでいただきたいと思います。1階にも2階にもある庭に面した大きな窓を通して、さまざまな植物が生い茂るガレの庭と、その庭を眺めるガレの姿や心象を想像しながら、作品をご覧ください。
「植物マニア」としてのガレ
展覧会のタイトルにもあるとおり、ガレは広大な庭でたくさんの(約3,000種。そのうち400種ほど日本の植物やその変成種も育てていたといいます)植物を育てていました。筋金入りの植物マニアへの道は14歳の時に友人とともに植物採集に打ち込んだことから始まりました。そして大人になってからも、フランス国立園芸協会やナンシー園芸中央協会などで中心的なメンバーとして活躍しています。
ガレの作品における植物の描写は、緻密な博物画とは全く異なるアプローチですが、ガラス器自体の形を球根や花弁の形にするなどの奇抜なアイディアも、植物の生態や形体をよく知っているからこそ生まれるものだったのでしょう。
ルネ・ラリックとエミール・ガレ
当館の本館建築には、ガラス工芸家ルネ・ラリックの作品が使用されております。ガラスがお好きな方にとっては、「ラリックの館でガレを見る」またとない機会になります。
ガレとラリックは、同じ1900年パリ万国博覧会で活躍しました。その時ガレは54歳で家具とガラス部門でグランプリを受賞し、ラリックは40歳で宝飾部門でグランプリを獲得し名声を確立します。ガレはその4年後に白血病で亡くなりますが、ラリックは宝飾から離れてガラス工芸家の道を歩み始め、1920年代から30年代のアール・デコを牽引しました。
芸術作品として哲学的な思索をガラスに込めたガレと、多くの人に美しいものを届けるため量産の道を探ったラリック。有機的なフォルムを描き出すアール・ヌーヴォーと、幾何学的でシンプルな美しさを目指すアール・デコ。20世紀初頭のガラスの歴史を凝縮したような出合いをご覧いただけます。