講演会「私たちは動物をどう捉えてきたか~旧朝香宮邸の動物を踏まえて」
2026年度東京都庭園美術館インターンシップ生による記事です。
私たちは遥か昔から動物を愛で、神格化し、研究し、時には恐れ、様々な理想や想像力を持って向き合ってきました。
東京都庭園美術館は1983年に美術館として開館して以降、旧朝香宮邸の建物に注目した展覧会を行ってきました。今年度の建物公開展のテーマは「アニマルズ」。主に当館の内装に散りばめられている絵画やレリーフ、所蔵作品、往時飼っていた動物などに着目し、改めて美しい建築空間、室内装飾を読み解く展覧会です。


東京都庭園美術館蔵
本ブログでは、2026年4月18日(土)に展覧会の関連プログラムとして行われた、講演会「私たちは動物をどう捉えてきたか~旧朝香宮邸の動物を踏まえて」の様子をご紹介します。
成島悦雄氏(日本動物園水族館協会顧問、元井の頭自然文化園園長)を講師としてお招きし、古代から現代までの私たちが動物へ向けたまなざしを、本展覧会と関連してお話して頂きました。また、今回のイベントでは情報保障の取り組みとして、手話通訳、文字表示支援、ヒアリングループ(磁気ループ)を実施しました。庭園美術館では誰もが安心して訪れ、美術館での時間を楽しめるよう、アクセシビリティの向上に継続して取り組んでいます。


講演は、本館入口に設置されている唐獅子からお話が始まりました。獅子(ライオン)は、世界各国で象徴的に扱われることの多い動物です。かつて動物が畏敬や狩猟の対象として捉えられていた時代から、農耕の広まりによって富が特定の人間へ集中すると、動物の捉え方も権力の象徴として変化しました。こうした中、アッシリアやバビロニアでは獅子(ライオン)が飼育されており、やがてエジプトではスフィンクス、日本では狛犬へと形を変えていったそうです。ちなみに狛犬は天皇の守護獣から、一般の神社に広まり、現在も日本に馴染みのある存在として認識されています。

そもそも動物園のはじまりは、16世紀から18世紀のヨーロッパに遡ります。当時、特権階級者の中でメナジェリーという動物飼育施設が広まりました。現在の動物園とは異なり、動物を富や権力の誇示のために収集・飼育することを目的としていました。18世紀末以降になると、一般公開されるものが増え、現在の動物園の形に近づいていきます。
私は講演を聞く中で、館内の装飾に現れる動物には、どのようなまなざしを向けることができるのだろうかと考えました。そこで思い出したのは、暖房器用カバーです。魚がモチーフとして使用されているこのカバーは、1階から2階まで多くのパターンを各部屋に見ることができます。とりわけ大食堂は圧巻で、大きな窓と連なり、建物の曲線に沿って部屋一帯に水光のような光が差しています。その光景は、室内の水族館のようにも感じることができるかもしれません。室内にいながらも、自然の美しさに癒されながら食事を楽しまれた当時の様子を、より鮮明に想像することができました。旧朝香宮邸である本館の装飾を、どのような思いで作られたのか、私たちの動物へのまなざしと照らし合わせて鑑賞することも新たな視点であると感じました。


今回の展覧会では、この他にも壁面装飾パネルに描かれた鹿やライオンモチーフの噴水、中庭のペリカンなど、どこに動物が扱われているのかを細部まで探すことも楽しみの一つです。さらに、当時実際に飼育されていた動物たちの映像も併せ、生活と建築を動物という繋がりで見ることができます。




成島氏は講演会の最後に、現在の動物とわたしたちの在り方について、お話してくださいました。
動物園は、人と動物のより良い関係を築くことが重要な使命のひとつ。動物園は、動物の調査研究を行い、その成果に基づいて野生動物の習性に合わせた適切な環境で飼育する施設である。また、レクリエーションの場であるだけでなく、教育や野生動物保全の役割も担っており、そうした機能を社会に示していきたい。さらに、わたしたち人間の行動で変化してしまった環境により、人間と動物が緊張関係になっている問題にも、長期的にどのような関係形成ができるのか、動物園として考えていきたい。
今回の講演で、私も動物の見つめ方を改めて考え直す機会となりました。分野を跨いだお話と美術鑑賞を繋げたこの講演会が、私たちの日常や社会へ広く視点を向けていく機会になったのではと思います。
執筆:東京都庭園美術館インターン 岡本まい