メインコンテンツにスキップ

やさしい日本語で美術館を楽しむプログラム「わたしの椅子を作ろう!」

やさしい日本語プログラム 活動報告ブログ

東京都庭園美術館では海外ルーツの方が参加しやすいプログラムとして、2021年より「やさしい日本語」を使ったプログラムを実施しています。

これまでの活動記録

本ブログでは、2023年2月12日と25日に実施したワークショップ「わたしの椅子を作ろう!」の様子を、プログラムの流れに沿って2日間の写真を織り交ぜながら報告します。


まだ寒さも残る2月、2日間開催したワークショップには、それぞれ3年生から6年生の子どもたちが9名集まりました。ワークショップの講師を務めるのは、アーティストの中島裕子さん(以下、裕子さん)と日本語教師の西山陽子さん(以下、陽子さん)です。

(写真奥左側:陽子さん、写真奥右側:裕子さん)

子供たちも大人も、普段話す言語は様々。ワークショップでは「やさしい日本語」を中心にコミュニケーションをとりますが、絵や物を使って指し示したり、時に英語も混ぜつつ、その場にいるメンバーが情報を補い合いながら進行します。

ワークショップのタイトルは「わたしの椅子を作ろう!」。椅子といっても、今回作るのは小さい椅子。釘を打ったり、鋸で木を切ったりはしません。館内で展示中の作品の観察を通して、様々な素材を組み合わせ、手に乗るくらいの小さな椅子を作ります。

部屋の中心に置かれたテーブルに並ぶのは、今日使う素材です。家やお店で見たことがある身近なものや、何に使うかよくわからないものまで。子どもたちは開始前から気になって仕方のない様子です。

みんなを知る・素材を知る

ワークショップは、集まったメンバーと知り合い、素材と仲良くなるためのエクササイズからスタートしました。まずは沢山の素材の中から気になる1つを選ぶゲームです。裕子さんの掛け声で一斉に選びます。制限時間は5秒!

何度か繰り返して直感で素材を選び取ることに慣れたら、次は2つの素材を選んで組み合わせるゲームです。

「2つのものを1つにします。」

裕子さんと陽子さんのお手本に続き、子供たちの番。制限時間は1分です。

瞬時に完成させる子もいれば、別の素材と入れ替えたり、悩みながらじっくりと取り組む子も。時間を徐々に縮めながら3回繰り返します。

「あなたの名前を教えてください!」「何を選びましたか?どこか好きですか?」

エクササイズのあとは自己紹介。それぞれが選んだ3組の素材から、一番気に入っている1組を皆に紹介してもらいます。今日一緒に活動するメンバーはいったいどんなものを選んだのか、素材を通してお互いを知ります。

いろいろな「椅子」を見る

次はグループごとに展示室に移動し、今日のテーマである「椅子」を見ます。 開催中の展覧会「交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー」には、1910年台~30年代のヨーロッパを中心とした国々のデザイナーなどによって制作された、家具や服、食器、本やテキスタイルなどの作品が多数展示されていました。

椅子は約30点が並び、オーストラリアやフランス、ドイツからやってきたものや、中には日本で作られた椅子もあります。一番古いもので約100年前。国を超えたデザイナー同士の交流から生まれた椅子をじっくり観察します。

いくつかの椅子を見て回りながら、各自が気になる作品も1点も選んでみました。形や素材の特徴を読み取り、それぞれが抱いた印象や発見、時に座り心地も想像しながら感想を話し合います。

「私の椅子」を作

展示室から戻ったら、待ちに待った「わたしの椅子」作りの始まりです。

子どもたちは気になっていた素材を自分の机に持ち帰り、どんどん手を動かします。作り方や選ぶ素材は自由ですが、「椅子」なので自立した構造でなければなりません。

素材にはプラスチックや金属、様々なものが混ざっています。貼り付かなかったり、うまく立たなかったり、思うようにならないことも。どうしても難しいときは、大人に相談してよい方法を一緒に考えます。

みんなの椅子を見

1時間の制作時間はあっという間に過ぎていきました。作品が出来上がったらタイトルをつけて、他の人が作った作品を鑑賞します。

新しい組み合わせ、形、そして中には動く仕掛けが備わっているものまで、同じ材料を前にしても出来上がった作品は全く異なります。

「どの椅子を作りましたか?」「どこが好きですか?」「どうやって座りますか?」

一人ひとり、裕子さんからの質問に答えながら発表することができました。他の子どもたちからも感想を伝え合い、「わたしの椅子」を通して会話がはずみます。開始時には緊張気味だった子も、この時には少しほぐれているようでした。

ワークショップの最後に、裕子さんから子どもたちにメッセージが伝えられました。

「今日使ったものは、椅子を作るための材料ではありません。いつもの使い方は忘れて、いろいろな組み合わせを作りましたね。そうしたら、素敵な材料に変わりました。素敵な椅子が沢山できました。」

「私はここが好き、これが面白い!という気持ちを大事にしてください。そうやっていろいろなものを見てみてください。毎日の中に、楽しいことがたくさんあると思います!」

様々な「もの」と対話しながら表現活動を行う裕子さんのメッセージは、日々様々なものごとに出会う中で、他の人とは違うかもしれない自分の視点を大事に扱うことの大切さを示してくれているようでした。子どもたちに裕子さんの言葉はどのように響いたのかはわかりませんが、手を動かすことや一緒に作品を見ることなどの経験を通して少しでも感じとっていてくれたら嬉しいです。

それぞれの「好き、面白い!」が光る作品は、本記事に続き写真で紹介していますのでぜひご覧ください。

撮影:井手大、執筆:大谷郁(東京都庭園美術館 教育普及担当)


子どもたちの作品を紹介します!

やさしい日本語で美術館を楽しむプログラム「わたしの椅子を作ろう!」

日時①2023年2月12日(日) 13:30~16:00
②2023年2月25日(土) 13:30~16:00
場所東京都庭園美術館 スタジオ及び展示室
対象小学3年生~6年生
外国にルーツのある子ども、日本の子ども
講師中島裕子(アーティスト)
西山陽子(日本語教師)
参加人数①9人 ②9人
協力広報協力:一般財団法人港区国際交流協会
材料提供:松山工業株式会社、株式会社クロップオザキ