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講演会 「「アール・デコ」におけるエグゾティスムー「他者」をめぐる魅惑と葛藤」

展覧会関連プログラム

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ドゥーセ邸

講演会
「「アール・デコ」におけるエグゾティスムー「他者」をめぐる魅惑と葛藤」

両大戦間期のフランスにおける美術や装飾芸術に見られる「他者」の表象を分析し、ジェンダーの視点から女性芸術家の研究を行ってきた天野氏。近年は「他者」としての女性の表象に留まらず、当時の絵画、彫刻、装飾芸術を横断する形で展開されたアフリカ、アジアの人々の具体的な表象のあり方についても研究を進めています。 本講演会では、植民地主義のイデオロギーを背景に形成された当時のフランスの美術、とりわけ身体や生活空間と密接に結びついた装飾美術に見出される「他者」性をめぐる問題について語っていただきます。

植民地主義を背景にしたある種のグローバリズムといったものが顕在化するのは、ヨーロッパでは第一次世界大戦以後であると指摘される。1920年代、1930年代のいわゆる「アール・デコ」の流行を支えていた一つの側面は、この帝国主義的グローバリズムであり、それがもたらしたエグゾティスムの魅惑である。とりわけ身体や生活空間に親密に結びついた装飾芸術の領域は、当時の植民地主義のイデオロギーを背景に、素材や技法がもたらす形態や色彩、質感や意匠を通して、非西欧という「他者」の特質を際立たせ、モダニティや古典主義と融合させることで、日常生活に組み込み、美的な消費の対象とした。こうした「他者」性は、西欧のアイデンティティにハイブリディティ(混交)をもたらすことによってそれを揺るがし、新たなものへと変容させる可能性を孕む一方で、西欧文化はまたその「他者」性を取り込み、それを消費することを通して、支配したとも言えるだろう。エグゾティスムを帯びた「アール・デコ」の装飾は、まさにその微妙な愛憎と交渉、葛藤と支配のせめぎ合いの場となった。本講演では、こうした状況を、展覧会に沿って、漆装飾、クロワジエール・ノワール、植民地博覧会といったいくつかのトピックと、それに関連する当時の具体的な事例や作例を通して考える。

天野知香

日時:2018年11月10日(土)14:00~
会場:東京都庭園美術館 新館ギャラリー2

講師:天野知香氏(お茶の水女子大学教授、西洋美術史)

参加費:無料 ※ただし「エキゾティック×モダン」展の入館料が別途必要。
定員:120名(事前申込制)

申込方法:
受付を終了しました。多数のご応募ありがとうございました。

お問合せ先
東京都庭園美術館 事業企画係 「エキゾティック×モダン」展 講演会担当
Tel 03-3443-0201 Fax 03-3443-3228
E-mail:info@teien-art-museum.ne.jp

講師紹介

  • 天野知香(あまのちか)

    美術史家。お茶の水女子大学基幹研究院人文科学系教授。東京大学文学部美術史学科、同大学院を経て、1987年から1991年までパリ第一大学芸術考古学研究所博士課程に留学。1994年東京大学より博士(文学)取得。専門は19-20世紀フランス美術史。主にアンリ・マティス、19世紀後半から20世紀における装飾と芸術の関係、20世紀における女性芸術家やフェミニズム美術史を研究。
    展覧会企画・監修、カタログ編集・執筆として、『マティス プロセス/ヴァリエーション』(国立西洋美術館、2004年)、『アール・デコ 1910-1939 きらめくモダンの夢』(東京都美術館他、2005年)がある。
    主な著書・編著・共著は以下の通り。『装飾/芸術―19-20世紀フランスにおける「芸術」の位相』ブリュッケ、2001年。「アンリ・マチス–デザインと「芸術」」、永井隆則編著、『越境する造形:近代の美術とデザインの十字路』、晃洋書房、2003年。「マリー・ローランサン-女性、装飾、絵画」、東京都庭園美術館、共同通信社編、『生誕120年 マリー・ローランサン回顧展』カタログ、共同通信社、2003年。「視覚『芸術』における身体-フェミニズムによる美術史の再検討」『シリーズ ジェンダー研究のフロンティア第五巻 欲望・暴力のレジーム-揺らぐ表象/格闘する理論』竹村和子編著、作品社、2008年。『西洋近代の都市と芸術3 パリⅡ―近代の相克』(編著)、竹林舎、2015年。『もっと知りたいマティス–生涯と作品』東京美術、2016年。「モダニズムを差異化する アイリーン・グレイについて」『西洋美術:作家・表象・研究-ジェンダー論の視座から』(共著)鈴木杜幾子編著、ブリュッケ、2017年)など。2018年11月に新著『装飾と「他者」-両大戦間フランスを中心とした装飾の位相と「他者」表象』(ブリュッケ)を出版予定。