木彫人物像によって80年代から一貫して日本の現代彫刻をリードしてきた舟越桂(1951年〜)は、近年両性具有のスフィンクスのシリーズを手がけ、新たな表現領域を切り開きつつあります。本展では、初期から2000年代前半までの各時期の彫刻から厳選し、さらに新作を含む近作群をまとめて紹介します。同時に、本展では作家が彫刻と同じく重要な創造の領域と考えているドローイング、版画にも等しく光を当て、表現者舟越桂の全体像に迫ります。
もうひとつの見どころは、アール・デコ装飾に彩られた庭園美術館の空間と舟越桂の作品がどのように出会うかです。ホワイト・キューブの美術館とは異なる個性豊かな部屋と、そこに置かれた舟越の彫刻、ドローイング、版画は、ひとつの緊密な織物のようにからみあい、ほかでは体験できない稀有な空間と時間をかたちづくります。美術館は魔術的な驚きに満ちた「夏の邸宅」へと変貌します。