~開館30周年を間近に控えた、東京都庭園美術館。
1933年に、朝香宮邸として誕生した当館は、日本人技術者だけではなく、フランス人アーティストたちが、室内装飾などに深くかかわっています。
フランス人アーティスト達が、建設に当たりどのような関わりをもったのか、ひも解きに当館学芸員がパリへ調査出張をしています。
このパリ便りでは、調査出張の経過や成果を数回に分けご紹介していきます。
また、この出張の成果は開館30周年記念展覧会でご紹介をする予定です。~
パリでは、連日美術館や図書館、政府関係機関などに通って、1920年代から30年代にかけての資料の調査を行っています。
今回の調査は、来る開館30周年に向けての準備とともに、旧朝香宮邸(現、東京都庭園美術館)の誕生に際して、アンリ・ラパンやルネ・ラリックのようなフランス人アーティストたちがどのように関わりを持ったのか、その資料をできる限り収集することを目的としています。

今回は貴重な資料が所蔵されているアーカイブを幾つかご紹介しましょう。まずはパリ市立歴史図書館から。
この図書館は、ラモワニョン館という16世紀に建てられたルネサンス様式の歴史的建築物を活用しています。
この図書館があるマレ地区には、このように貴重な文化財を活用した文化施設がたくさんあります。
古い外観とは対照的に、これらの施設ではコンピューターを使った検索システムが完備され、効率的に資料を探すことができるようになっています。
このパリ市立歴史図書館では、朝香宮夫妻が滞在していた当時の紳士録や、アール・デコ博覧会関係の文献資料を閲覧することができました。

続いては、そのすぐ近くにあるフォルネー図書館です。
こちらもやはりサンス館という中世の建築を活用した図書館です。
この図書館は建築や芸術関係の文献が多数所蔵されていることで知られ、ラパンが活躍していた当時の建築雑誌を総覧することができます。

その中に、ラパンが1932年のサロン・ドートンヌ(秋のサロン)に出品した、朝香宮邸の装飾模型の写真がありました。
惜しいことに、写真に対する詳しい解説は記されていないのですが、パリで当時の雑誌に宮邸の装飾案が掲載されている様子を目の当たりにすると、とても感動します。

パリには装飾芸術を専門にした美術館があります。
広大なルーヴル宮の一画にある、パリ装飾芸術美術館です。
この美術館は、中世から現代にかけての装飾芸術をテーマとした大コレクションを有しています。
庭園美術館とも関係の深い、アール・デコの時代の作家たちの作品も多数収蔵されています。

生活に関する品々や装飾品が所狭しと展示された常設展のコーナーはたいへん見応えがあります。
この美術館には図書室が併設され、貴重な文献資料を直接手にとって閲覧することができます。
ここではアール・デコ博覧会関係の資料や、ラパンが活躍した装飾美術家協会の展覧会についての資料を調査しています。

これらの施設に通うためにパリの市内を歩いていると、公共の広場に市場が開設されていることがあります。
生鮮食料品や衣料品、装身具や土産品など、扱っている品々は多種多様ですが、どれも魅力的で目移りしてしまいます。

また、街中いたるところにパッサージュと呼ばれるアーケード街があります。
メトロのグラン・ブルヴァール駅に近い「パッサージュ・デ・パノラマ」には、切手や写真を扱う小さな店舗がたくさん集まっていて、週末ともなると多くの収集家が掘り出し物を探しにやって来ます。
年代別・地域別・テーマ別に細かく分けられた絵はがきのコーナーは特に人気で、数千枚もある中からお目当ての一枚を求めて、熱心に手を動かす人の姿が絶えません。
アール・デコ博覧会関係の絵はがきもあるかもしれませんね。私も時間を見つけて掘り出し物を探しに来たいと思います。
(執筆:牟田)