東京都庭園美術館


アール・デコ

 アール・デコとは、1925年の4月から11月にかけてパリで開催された「現代装飾美術・産業美術国際博覧会(Exposition Internationale des Arts Decoratifs et Industriels modernes)」の略称を由来とする名称であり、1925年様式(LE STYLE 1925)ともいわれています。1910年代から30年代にかけてフランスを中心にヨーロッパを席巻した工芸・建築・絵画・ファッションなど全ての分野に波及した装飾様式の総称です。

  工業の発展は、合成樹脂、鉄筋コンクリート、強化ガラスといった新素材を次々と生みだし、製品は大量生産され、19世紀とは全く違った商品と消費による新しい世界を開拓しました。新しい価値観は、まず用と美との両立を目指していた応用美術の作家たちにも新しい美の創造を促したのです。アール・ヌーヴォーの最も簡素な側面、キュビスム、ロシア・バレエなど様々な芸術を源泉として、直線と立体の知的な構成と、幾何学的模様の装飾をもつスタイルが徐々に確立されていきました。

  1920年代というのは、現代生活の枠組みができた時代であり、飛行機が飛び、汽船による観光旅行が盛んになり、汽車や車はスピードを上げ、世の中のあらゆるものがめまぐるしく動き始めました。この動き−リズミカルでメカニックな動きの表現が、アール・ヌーヴォーの有機的形態に取って代わり、鉱物的で直線的なアール・デコの基調となっています。それは電波を表現したジグザグ模様やスピード感あふれる流線形、噴水の図様などに見ることができます。

  社会生活全般における様々なものが合理性と機能主義一辺倒となった今日、近代生活のはしりといえる1920年代、30年代の機能的でありながらも装飾美を兼ね備えたアール・デコ様式が今日再び新鮮に受け止められ、脚光を浴びるようになりました。

写真
  • 大客室から次室を望む
写真
  • エッチング・ガラスのパネルをはめこんだ大客室の扉
写真
  • 大広間から二階ホールに続く
    階段の手すりの装飾
写真
  • 姫宮寝室前の照明器具
    (1930年ごろ)

この画面の上へ